CULTURE

ハワイの聖地 #2「ワヒアワ・バースストーン・クカニロコ」

ブログ150-1

みなさん、こんにちは。

ハワイの聖地の紹介の2回目。今回は、前回のマウナケアに続きやはりハワイアンにとって(私たち自身にも)重要な場所、「ワヒアワ・バースストーン・クカニロコ」。ここは、王家の人たちが産まれた場所だからというだけでなく、地域の名前を決めたり、航海の技術を学んだり、と、人の暮らしを守るための政治を発信する場所でもあったのです。多くのハワイアンたちは、ここは歴史的にも、とても重要な場所だとおっしゃられています。

歴史学科も出ていないどころか大学すらも出ていない私が、そんな重要な場所に関わることになったのは、こんな出来事からです。この場所はいつしかパワースポットという短略的な情報だけが出回り、多くの観光客が集まるようになりました。そして、情報はコマーシャル化され、妊娠祈願をするところ、安全祈願をするところ、などに変わっていきました。そんな矢先、近くに住む私がフリーランスとして雑誌に記事を書いていることがクプナに伝わり、呼び寄せられることになりました。

「真実を書いてください」と言われ、その時から数年、私の修行が始まりました(笑)。知らなかった領域。そこを書くには私自身が理解しなければならない。何度もこの場所に足を運び、ボランティアにも参加しました。言葉だけではダメということを知った私は、夜一人でこの場所に来て、数時間を過ごしました。

インターネットでシェアする文章は、日本語でまず立ち上げる。そして英語の直し、カフ(クカニロコを守る長老)に確認してもらう。「歴史は出来るだけ正確にリサイクルされなければならない」というカフの言葉に従い、作った文章がこちらです。ということで、とても長いのですが、自分の判断で短くすることは、間違っている様に思うので、そのまま彼らと仕上げた文章をみなさまに見てもらうことにしました。

では始めます。

ーーーーーーーーーーーーー

「クカニロコとの出会い」

まさか自分がハワイの最も聖なる土地と言われる
クーカニロコの記事を纏めることになるとは思わなかった。

切っ掛けはこんなことからだった。

ハワイアンヒストリーの映画を作るという(次女の)ハワイアンヒストリーの先生が、
プロジェクトは多くのサポーターを得て成功するものだから
日本の人へもアプローチをしたいということで、
パートタイム的に物を書く私のところに話しが廻ってきた。

『オアフ島で一番神聖な場所のクーカニローコに、意味もわからずに来る日本人が増えていて、代々その場所を大事に守っているハワイアンの家族が困っている。それを書いてもらいたいんだ』と。

ふむ、、、
あまり気が進まない。。。というのが正直な気持ちだった。

というのは、当時私は、あまりハワイアンが好きじゃなかったから。
少なくともその時はそう思っていた。

それはわたしが住む環境が要因している。
サーフィンのメディアという立場で海にいるハワイアンたちを見てきたが、
過激派が多すぎるのだ。

ハワイで育ったのにも関わらず
白人というだけで嫌悪感をしめしたり
時には殴ったりもするのをこの目で見てきたからだ。

が、この言葉がわたしを奮い立たせた。

『日本人のある芸能人が聖なるバースストーンの上に乗って写真を撮って、ブログに載せていたのを俺のワイフが発見して取り除いてはもらったけど、誰かが立ち上がらないと、そのうち聖地は荒らされて見るに見かねる状況になるに違いない』 という彼の言葉。ハワイアンの歴史に限らず【歴史は全ての人間が学ぶべき物。歴史的建造物はなにがあっても壊してはいけないもの】というポリシーを持つわたし。何か使命的なものを感じてしまい、クーカニローコを代々世話しているクプナ/ハワイアンの女性に会いに行くことにした。

ーーーーーーーーーー

『日本人の皆さんに本当のクーカニローコを
知っていただきたいと思ってたんです。
そんな時に貴方が現れた。』

ハワイアンのジョーリン•レンチェンコ •カリマパウさんは 
私の心配をよそに おおらかに迎えてくれた。

『クーカニローコはパワースポットでもないし、
子宝に恵まれるところでもない。
安産祈願をすることろでもないんです』と。

それだけではない。
お供えをしてはいけないというのだ。

『監視がいないのでお供えものをするとそれが腐り、
ネズミが多量に発生し、病原菌をばらまく種になるんです。
その変わりに持ってきて欲しいのは水。
ここには水道が通っていないんで、
雨(ウアーハワイ語)に植物にあげる水を頼ってる状態です。
水を植えられている植物にあげていってくれたら、本当に助かります。』と。

これは私にとってもショッキングなものだった。
日本のインターネットだけでなく
英語で書かれているバースストーンことクーカニローはパワースポット、
子供を授かる場所、安全を祈願をするところと書いてある。

一体どういうことなのか? 

『人から人へと伝わる話しがいかに確信できないものか、わかりますよね。
1人がここに来たら子供が出来たといえば、子供を授かれる場所となるし、
ある人がここに来て病気が治ったというと、ここはヒーリングスポット、
パワースポットとして人々にに伝わっていく。』

『クーカニローコのマナはとてつもなく強い。
強い愛を秘めたところです。
でも、決してパワースポットではないんです。

パワースポットであるということは、
ここに来て貰うものや削ぎ落すものが出てくる。
そんな利害関係は全くないのです。

そのかわりあるのは、愛と光。
家族の愛と光に満ちあふれるところなのです。』

KŪKANILOKO…TO ANCHOR THE CRY FROM WITHIN.

自分自身で痛みを癒すことができる、、、それがクカニロコの意味だだという。

『クーカニロコの歴史』

エミコ:この場所はいつから使われているんですか?

ジョーリン:1060年です。
アリイのナナカオコとそのカヒキオカラ二の子供カパヴァの出産でここが使われました。

エミコ: 王家の出産の場所だったんですね。

ジョーリン:はい。でも、王家のアリイ中でも神様からの血筋を引いている
とりわけ高貴な血筋の人だけがここで産むことができたんです。

たいていは一番光のエネルギーが強い8月産まれ。
ここで産まれれば神々が赤子がお生まれになること確認でき、
神様が赤子をとおしてマナを地上に送リ込むのです。
赤子はハワイの人々を立派にリードする王様になれると言われていました。
人々と自然が織りなす「いのち」の営みを統一する
知徳兼備のアリイ(リーダー)を送ることで、
神々はハワイアンたちに平和と繁栄に富むパラダイスを約束してくれたのです。

エミコ:ということは、カメハメハ系の人たちもここで産んだんでしょうか?

ジョーリン: カメハメハ大王から二世、三世は、
1800年前後の話しです。
ここを使われていたのはもっと前の話しですから。
最後にここで産まれたのはKakuhihewa(カクイへバ)。ですので、
1600年あたり。それからクアロアのパースプレイスが使われる様になりました。』

エミコ:でも、カメハメハ大王もここを使いたかったらしいという事も本で読みました。
たくさん居た奥さんの中で、もっとも純粋な血を引くKeōpūolani(ケオプオラニ)がここで産ませ様としたけれども、願いが叶わなかった。
理由はカウアイにいた彼女は病気になり、ここまで辿り着けなかったとか。。

ジョーリン: そうなんですね。それは彼(カメハメハ大王)の運命だったと思います。
カメハメハ自身は神の血筋から相当離れた位置にいたんですが、
純粋な血を引いケオプオラ二の家族を襲い、落し、
まだ少女だったケオプオラ二をまるで誘拐する様に娶ったんです。
彼はケオプオラ二にどうしてもここで子供を産んでもらいたかったのですが、叶わなかった理由は、
彼自身が作った傷のせいなのです。
他人を傷つけていた彼がここで産むことが出来なかったということで
ここがいかに人間に優しいところ(世の平和の為にあるところ)
ということがわかりますよね。

エミコ:なるほど。。。元々ここは36.000エーカーの広大な土地だったそうですね。
けど今は5エーカーになってしまった。経緯を教えてください。

ジョーリン:1900年代にパイナップル業者がここでパイナップ農業をはじめました。
その時に妊婦が神聖なる儀式Hāwea and ‘Ōpukuのドラムの音が鳴り響く中で臍脳を切った
ヘイアウ(Ho‘olonopahu)が破壊されました。

それだけではありません。
元々二つの河に別れるところの三角地帯が
クーカニロコの入り口でした。

その入り口にはPOHAKU石があり、
それを越えるとクーカニロコ.クーカニロコは王家の人しか入れなかったので、
その石を越えたら、死刑という厳しい掟の目安になる大事な石が
分岐点の役目を果たしていた。

ですが、その河にダムを作るために河は変えられてしまい、
出来てからは、河の形が変わってしまったので
、石の役目も無くなってしまいました。。
いろんな要素から土地がどんどん狭くなってしまいました。』

エミコ: 現在は誰がここを管理しているのですか?

ジョーリン: ワヒアワのハワイアン市民クラブが
4世代に渡ってここと永久のものにする為に力を入れてお世話をさせてもらっています。

ただこの団体はボランティア団体で、お金は一切政府から貰えていないんです。
ハワイアンの文化は、今存在するハワイの子供たちだけではなく
、ビジターも教育する、、、7世代先の子供たちの為に。

お金はその教育費と、クーカニロコを管理するために必要なのです。
だからツアー会社の人たちが観光客を連れてきますよね、彼
らからは全くお金をいただいてないのですが
、少しでも寄付をしてくれたらと。。。
せめてビジターに正しい情報を与えて欲しいものです。

ワヒアワ市民クラブがボランティアでここの場所を守っているということを聞いた時に、
『人をどんどん呼んで入場料を取ればいいのに、、、』
『人集めの為にはパワースポットってことで売り出せばいいのに。。』
『安産祈願のお守りとか売ればいいのに、、。』
などなどと様々なアイデアが浮んだ。
しかし話しを聞いているうちに、そのアイデアが不純なアイデアの様に感じ、
口に出せずに終わった。

この原稿を仕上げるにあたり、
彼らのコンセプト(お金と真実の関係)を理解したく、図書館に行き、様々なハワイの歴史本を読んだ。

ハワイにはたくさんクプナと呼ばれる人がいる。
クプナとは日本の歴史の言葉を借りれば『語り部』。
実際には年輩者とも訳せるが、
人生かけて歴史や文化を伝えていく役割を担う人たちのこと。
そういう人たちはハワイの歴史を文化を伝えるのが人生と通しての役目だと思っている。
そこには利害関係は全くない。
お金が集まるか集まらないかは関係なく、話しを伝えている人たちなのだ。

特に古典フラを教えるクムフラと対談した時に出てきたこの言葉は
《お金目的で動かないが為に起こっている問題》をクリアにしてくれた。

『クプナはハワイを心から理解している人たちなんです。
ハワイの先住民族がどの様に生きてきたか、
大自然と人と神と血筋を繋がってきたのか、
よく理解しているんです。
ハワイ大学ではクプナの能力を使って研究が進んでいました。
ところがクプナには学位を与えられなかった。
知識だけ取られてなんの報酬も得られなかった!
結局、学位がない上、お金にもならない語り部をしているクプナには
意外と低所得者が多く、生活に困っている人たちが多いんです。
なにより、もうそんな諦めて、話しもしなくなったクプナも少なくありません。』

出産だけではないクーカニロコ。

サイエンスをも把握していたのがハワイアン文化。
ハワイアン文化は宗教と勘違いされがちだが、実は
《生き方を解いたもの》。今日はそれを説明します。

エミコ:入り口に並んでいる石は?

ジョーリン: 18個の石が両側に並んでいますよね。あそこにアリイたちがグレイトリーダーの出産の目撃者として座りました。その中の1人が父親でした。他の島からのアリイも集まったのですが、
当時のハワイアンたちは出産予定日を確信していたんですね。

エミコ:産まれた後はへその緒をその場で切って岩の間に隠すという話しがインターネットででていましたが、本当ですか?

ジョーリン: いいえ、間違えです。赤子が産まれたやいなや、妊婦とともに10分離れているHo‘olonopahu ホオロノパウ へイアウに運ばれ、そのヘイアウで(竹を尖らせたもので)へその緒が切られました。
48人の高貴なアリイに見守られながら。そこで Hāwea and ‘Ōpuku の太鼓がならされ、周囲の一般の人たちにも出産が知らされました。

エミコ:産まれた後はへその緒をその場で切って岩の間に隠すという話しがインターネットででていましたが、本当ですか?

ジョーリン: いいえ、間違えです。赤子が産まれたやいなや、妊婦とともに10分離れているHo‘olonopahu ホオロノパウ へイアウに運ばれ、そのヘイアウで(竹を尖らせたもので)へその緒が切られました。
48人の高貴なアリイに見守られながら。そこで Hāwea and ‘Ōpuku の太鼓がならされ、周囲の一般の人たちにも出産が知らされました。

エミコ:出産の予定がない時はこの場所は閉じられていたんですか?

ジョーリン:いいえ。ここは今でいう大学。アリイ候補の若本たちを教育する場所でもありました。

エミコ:教えられていたことと言うと?

ジョーリン:アリイが習得しなければならない13の教えの一つで航海技術を学ぶというのがあります。

そして廻りは海と想像してみてください。そこに散らばる石が実際には太平洋に浮ぶ島々と想定する。
夜空に光る星座と照らし合わせて、舵取りの訓練をしたのです。

例えばこのポハク(石)はオアフ島です。凹んでいるところがここ、クーカニロコです。

ブログ150

細長い石の前にある石は、地面に近いところを見るとボール型に掘られているのが確認できると思います。
その穴は以前上を向いていました。そこに水を入れ、星空をうつして、星座の勉強をしたのです。』

ブログ150-

エミコ:クーカニローコは島の真ん中だから島の臍にあると聞きましたが。

ジョーリン:そうなんです。あの山は( 西の方を指差し)ワイアナエ山脈Waiʻanae Range

東をみるとコオラオ山脈Koʻolau Rangeがあります。

ワイアナエ山脈がワヒネ(女性)で、コオラウ山脈が(男性)に当たります。
大昔 はその二つの山を中心に二つに分かれていました。
それが年月を重ねて重なりあい、ここがちょうど中心になりました。

ダイアモンド型の石(POHAKU)の中心に描かれている渦巻きの様な形の中心が
ちょうど島のへその緒に当たるわけです。
近年、科学者が確認したところ、地理的にも確かにここが島の中心であることが確認できています。

その石は日時計としても使われていました。臍の緒のところに棒を立てると陰が出来る。
その陰の位置で時間を確認できる。突起と突起の間を陰が移動する時間はちょうど2時間半なのです。

なんどもこの石はブルトーザーで潰されそうになりました、、、、。(この石はピコ石とも言われ、その意味はこちらをごらんくださいませ。   http://hawaiilove.jp/culture/790/  http://hawaiilove.jp/culture/784/  )

写真4

2時間以上も使ってお話ししてくれたジョーリンさん。疲れた様子を少し察したので、会談を切り上げることにしました。もう十分。十分すぎるほど伝わった。そう感じた私もワイアナエ山脈に沈んでゆく夕陽を横目に家路につきました。

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ここまで聞けば、きっとみなさんも、ここがいかに大切なところであるということがわかっていただけたと思います。実はまだまだ深い歴史が残されているのですが、これ以上、掘る必要がないような気もしました。地元の人の中で大切に伝えられている歴史に、ただの興味本位でしかみてない私のような者がこれ以上の触れてはいけないのかもしれないと思っています。

人にはこだわりがあり、こだわりがあるから人なのだと思うのです。

同じ成分でできているのに、人間が植物ではない理由がそこにあるのだと思うのです。そのコダワリを思いやりもないのに触れてしまうと、爆発する。爆発の度合いは大小あると思いますが、正常ではない心が発生する。それは時には世代を超えて、悪い方に向く要因にもなり得る。そう思えてなりません。過去の人たちの歩み、そして地球の隅々までを自分自身だと捉えてるハワイアンにとって、聖地はこだわり。人のこだわりを私は卵の黄身と例えます。触れてしまうと簡単に崩れてしまう大切な部分。触れるのであれば本当に気をつけて接しなければならないと。

そういった意味でも、私は、もう二度とあの場所に入ることはないと思っています。

もう十分すぎるほど文章を仕上げたお返しをしていただいた。それは、

Kukaniloko – “to anchor the cry from within”の意味。

自分は自分を癒せるのだ
自分を癒すのは自分自身しかない。

そこに全てがあるのだと、気付かされたこと。

PS クカニロコのケアテイカーを40年以上守っているカフ・トムレンチャンコさんがクカニロコの場所と意味を詳しく説明している動画を許可を得て和訳しました。https://vimeo.com/167009697

次回はクカニロコで出産を終えた妊婦さんが悪露を流した場所を紹介します。

では次回まで

アロハ

記事: エミコ•コーヘン
ノースショアの宿(ハワイラブカード加盟店)
Facebook https://www.facebook.com/alohaemiko
You tube「英語の勉強しよう!」https://youtu.be/2MlQIl2N3dI

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